<火災>「ゴミ屋敷」燃える 愛知・豊田
毎日新聞 2015年8月25日(火)21時49分配信

 25日午後、愛知県豊田市の男性宅から出火。隣接する民家にも延焼し、木造2階建て住宅2棟が焼けた。男性宅は屋外にまでゴミがあふれる「ゴミ屋敷」として近隣で知られていた。愛知県警豊田署が出火原因を調べている。


 

火災の時の責任(賠償責任)は普通の責任問題とは違う面があります。隣のゴミ屋敷から出火して自宅が延焼しても隣に重大な過失(=重過失)がなければ法律上、賠償責任を追及できません。被害者には納得しがたい部分があります。

日本は木造住宅が多く、延焼した分まで出火元に責任を負わせると負担しきれないという考えが基本にあるためです。これは『失火の責任に関する法律』で規定されています。

自分の家は自分で火災保険をかけろという事でしょう。

隣に重大な過失(=重過失)があれば賠償責任を追及できる

しかし隣に重大な過失があれば賠償責任を追及できます。具体的に重大な過失とは下記のような事です。

  • 寝タバコにより出火
  • 天ぷらをあげたままキッチンを離れ、油が引火し火災
  • 石油ストーブをつけたまま給油を行い、こぼれた灯油に引火して火災
  • 子供の火遊びによる火災(保護者には監督責任がある) など。

加害者(出火した方)になった場合

『重大な過失』が無ければ隣家に延焼した分の賠償責任は負担しなくて良いです(法律上は)。自宅の火災保険がかけてあって『類焼損害補償特約』をつけておけば、お隣の分もある程度保険から支払われます。(道義的責任に対しての保険)

『重大な過失』があった場合は隣家に延焼した分の賠償責任を負担する必要があります。もし『個人賠償責任保険』に加入していれば、ある程度は個人賠償責任保険から出ます。

自宅が燃えた分については火災保険に入っていればある程度は火災保険から出ます。

被害者(延焼した方)になった場合

出火元に『重大な過失』が無ければ自己負担となってしまいます。出火元に『重大な過失』があった場合は隣家に請求できます。

ゴミ屋敷から出火した例では蚊取り線香から出火したといわれています。そうであれば『重大な過失』になる可能性が高い(=被害額を請求できる)と思われます。

先方に支払う意思があれば話は早いのですが、ゴミ屋敷の主に払う意思があるとは思えません。

火災保険に入っていれば自宅が燃えた分についてはある程度は火災保険から出ます。

賠償責任があるのに払う意思が無い場合は土地を仮差押え

上記のゴミ屋敷の建物は全焼しています。普通の精神状態でしたら土地は売ってほかへ引越しするでしょう。

条件はありますが賠償責任があるのに払う意思が無い場合、土地が売られる前に仮差押えができれば有利に交渉できます。

仮差押えは請求額の20%を供託して仮差押の登記をすることで完成します。仮差押えの登記をすると土地が売れなくなるので交渉が有利にすすめられます。

1,500万円の請求額なら300万円の供託金です。供託金は後から戻ってきます。

さすがにこの手続きは専門家に依頼する必要がありますが、額が大きいので元が取れると判断できれば早く手続きに入ったほうがいいでしょう。

火災時に必要な保険は

出火元になった場合
  • 火災保険(自分の家のための保険)
  • 火災保険の『類焼損害補償特約』(責任が無い場合の延焼先への保険)
  • 個人賠償責任保険(責任がある場合の延焼先への保険)
隣から出火して自宅が延焼した場合
  • 火災保険

このほか地震の時の火災には『地震保険』が必要です。地震による火事だと通常の火災保険では保険金が出ませんので注意が必要です。

東隣から出火して自分の家が燃え、西隣へ延焼した場合、西隣についてはさすがにウチには責任はないですから自分の家だけ何とかすれば道義的にも問題ないと思います。